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I.はじめに
近年,わが国では界アレルギーが急激に増加しており,逆に慢性副鼻腔炎は軽症化し,あるいは減少しているという印象がある。このような現象の中で,小児の副鼻腔炎がどのように変わったかということは,慢性副鼻腔炎を理解する上で重要であると同時に,臨床上でも高い関心が持たれているところである。わが国は欧米に比べて慢性副鼻腔炎の頻度が高く,かつ蓄膿という型の重症例が多いところから,早くから研究対象として取り上げられており,研究レベルも高かったように思われる。しかしながら,小児の場合は二本棒と称して膿性の鼻漏を垂しているものが多かったにもかかわらず,あまり問題にされないままになっており,系統的な研究がなされたのは戦後のことで,昭和25年頃から昭和30年代にわたってである。
しかしながら,上述したようにその後わが国の慢性副鼻腔炎は次第に軽症化する傾向が現れると同時に,一方では鼻アレルギーが増加するという現象が起こってきた。確かに膿性鼻漏の多い症例が減少しているし,手術で上顎洞を開放しても悪臭のある膿汁の貯留を見ることは稀になった。また,鼻アレルギーは昭和40年頃から年々増加傾向をたどっている。ちょうどこの時期はわが国が高度の経済成長をとげ,工業化が進み,外国との交流も一段と盛んになり,日本人の生活環境や食生活に著しい変化が起こった時期である。すなわち食生活では肉類などの高蛋白の食餌が多く,栄養的にも改善された。また生活環境では新しい外国からの動植物に接する機会が多くなり,化学工業製品が生活と密着し,大気汚染などの公害も現れてきた。また医学の進歩では特に新しい抗生物質がつぎつぎに開発されて感染症に対しては驚異的な威力を発揮してきた。これらの事実は日本人の慢性副鼻腔炎の軽症化あるいは鼻アレルギーの増加となんらかの因果関係を持っているだろうことは,すでに指摘されてきたところである。しかしながら,その実態はまだ明らかにされていない。
The incidence of chronic sinusitis in Japan have been decreased and serious cases were also reduced for past few decades, while nasal allergy has been increasing.
The cause of these phenomena is complicated, but it is clearly related with changes of nutritions and our living environments, and moreover with the advance of antibiotic therapy.
I generally discussed these problems in our studies about the occurrence and process of chronic sinusitis in children.
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