特集 副鼻腔炎診療は変わったか?
序―副鼻腔炎診療の変遷
吉川 衛
1
Mamoru Yoshikawa
1
1東邦大学医療センター大橋病院耳鼻咽喉科学講座
キーワード:
副鼻腔炎
,
病態
,
好酸球性副鼻腔炎
,
手術療法
Keyword:
副鼻腔炎
,
病態
,
好酸球性副鼻腔炎
,
手術療法
pp.113-113
発行日 2023年2月1日
Published Date 2023/2/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000000451
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- 文献概要
副鼻腔炎診療において,その病態の変化は避けて通ることができない問題点となっている。特に,好酸球性副鼻腔炎と呼ばれる難治性の慢性副鼻腔炎の増加が診療へおよぼす影響は大きく,近年の生物学的製剤の登場などによりその治療も変わりつつある。マクロライド系抗菌薬の少量長期投与(マクロライド療法)や内視鏡下鼻副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)の普及により慢性副鼻腔炎の治癒率が向上すると,一部に難治性の病態が存在することが問題となり,そのような患者の鼻茸組織中には著明な好酸球浸潤を認めることが解明された。その結果,2001年に森山・春名らによって好酸球性副鼻腔炎という疾患概念が提唱されるに至った。しかし,その疾患概念が初めて提唱されてから約22年もの歳月が経過し,厚生労働省の指定難病に認定された現在でも,病態の詳細な機序は解明されていない。そのため根治は程遠く,病態をいかに制御するかについて多くの議論がなされている。その中で,2020年3月に「既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に対して初の生物学的製剤であるデュピルマブの投与が保険適用となり,難治例に対する治療の選択肢が増えた。その適正使用については十分な考慮が必要だが,副鼻腔炎診療を大きく変える薬剤であることは間違いない。
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