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Ⅰ.緒言
アスピリン(サルチル酸製剤)が聴覚障害の原因となり得ることは,すでに100年も前から知られているが,その実態がわかり始めたのはつい最近のことである。アスピリンが世界中至る所で昔から使われている薬であるにもかかわらず,副作用としての難聴の報告が数えるほどしかなく,またその実態が長い間明確にならなかったのは,その難聴が一過性であり,アスピリン投与を中止することによって一般には痕跡なく消失することによると思われる。アスピリンによる難聴が一過性であるという事実は,この難聴の臨床的意味を経いものにしているわけであるが,内耳性難聴の病態生理を考察する上には重要な現象である。
最近筆者らは,アスピリン大量投与によって一過性の難聴を起こした少女の聴力を,投与前から完全回復までの8日間,経過を追って追跡観察した。聴力の検査は通常の純音オージナメトリーと,自記オージオメトリーとによった。この知見は筆者らが調査し得た限りにおいて今までの文献に見出されないものであり,新しい知見である。
A fourteen-year-old girl, suffered from transitory hearing loss due to aspirin adminstered for treatment of arthritis was reported. Pure tone audiometry and Bekesy audiometry were performed every day, prior to aspirin intake till complete recovery after 8 days. Literatures were reviewed and the characteristic feature of the aspirin induced hearing loss was discussed.
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