特集 今日の耳鼻咽喉科
日常診療に必要な知識
ショック
ショックの際の輸液の選択
高折 益彦
1
1川崎医科大学麻酔科学教室
pp.779-784
発行日 1979年10月20日
Published Date 1979/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208967
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ショックに対する治療の基本方針の中で体液調節が占める役割ははなはだ重要であるといわざるをえない。なんとなればショックは"機能的循環血液量の減少を基盤とした急性の末梢循環不全で,それによつて末梢組織の代謝不全が惹起されている状態"と定義されるようにもつとも根底にあるのが"機能的循環血液量の減少"であるからである。機能的循環血液量は血管内に実存する血液の1部であつて全血液量に対する割合は明らかではないが,おそらく全体の40〜60%でなかろうかと推測されている。そしてこの量は脈管系(とりわけ静脈系)の血管壁緊張度,組織圧(組織間液量,その組成などにより決定)などの因子によつて刻々と変動するものである。むろん出血によつて血液の絶対量が減少すれば機能的循環血液量も減少し,これを輸血,代用血漿剤などで補うことの必要性については当然過ぎるといえよう。さらにまた,ショックにともない発生する肺機能不全と輸液の量,質との関係,肝臓,心臓など重要臓器の機能改善とその熱源補給と補液との関係などいまだ未解決な重要問題が残されていて,ショック時の輸液の選択を論じること,とくに画一化して論ずることは困難である。そこでここではショックの原因別な分類に従つて治療の具体性に応じて考察を加えた。
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