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Ⅰ.はじめに
熊本および新潟地方に発生せる有機水銀中毒症は水俣病として周知の如く一般社会に注目され,難治性疾患として取扱われ諸方面の関心が深い。本症は有機水銀に侵された魚介類の摂取により経口的に感染し,ひとたび症状が発生すれば非可逆性の疾患として神経症状が残存し,その病態は主として中枢神経系が侵され,水銀摂取を停止してもなお障害を残し,あるいは発症する可能性があるとされている。また有機水銀によつて起こる障害領域は広範であるが,その中には眼球運動,言語機能,聴覚,平衡など日常生活における感覚器や神経機能にもつとも関連が深い部位が障害されるため,症状の程度に個人差があるとしてもその受ける影響は重大であり、かつ,一般に年余に亘る後遺症やその予後は不良とされている。
このように有機水銀中毒症は病因,障害領域,経過,予後などにおいて他の中毒症にみられない幾つかの特殊性を有するが,無機水銀による中毒症もまた主として中枢神経系に障害をもたらし,症状発現時に手指の振戦,聴覚障害,言語障害,平衡障害など有機水銀中毒症と類似の様相を呈する。しかしながら無機水銀中毒は体内への侵入経路およびその後の経過状態において有機水銀中毒症と幾つかの異なる点がみられる。
In a 56-year-old man who was diagnosed as having inorganic mercury poisoning the neurotological examinations were performed. The clinical symptoms and the results of the examinations were almost same as those in organic mercury poisoning, but these findings except a few symptoms were disappeared by treatment.
According to the results of the neurotological examination, comparison of the findings between organic and inorganic mercury poisoning was made and the problems arised from inorganic mercury poisoning were discussed.
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