創刊50周年記念特集 今日の耳鼻咽喉科/治療のコツと全身管理
咽喉頭—症候と疾患
咽後膿瘍
坂倉 康夫
1
1三重大学医学部耳鼻咽喉科
pp.819
発行日 1978年10月20日
Published Date 1978/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208761
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咽後膿瘍は主として3歳までの乳幼児の口腔,咽頭,鼻腔,後部副鼻腔,鼻咽頭,耳管,中耳の炎症がretropharyngeal space内の咽後リンパ節に波及して生ずる場合,あるいは同spaceへの外傷,異物侵入によつて生ずる乳幼児咽後膿瘍と,頸椎Pott病による成人咽後膿瘍に大別される。本稿では主として乳幼児のそれについて述べるが,後者の結核による咽後膿瘍では口内法による切開排膿は原則として禁忌とすべきであろう。
治療法の選択:本症の治療法には非手術的療法と口内法による膿瘍の切開排膿,あるいは頸部外切開による排膿の手術的療法がある。いずれの治療法を選択するかは患者の気道狭窄の程度によるのは当然である。非手術療法を行なうのは気道狭窄が軽度で,飲食物の摂取に障害がなく,咽頭後壁の膨隆も軽度で一側に限局し,患側頸部の硬結もない症例に限られる。この際常に緊急手術の必要性を念頭に置かねばならない。
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