特集 耳鼻咽喉科手術の危険度
咽頭
咽後膿瘍
牛嶋 申太郎
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.789-790
発行日 1969年10月20日
Published Date 1969/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207362
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I.咽後膿瘍を放置したり,診断できなかつたりした時の危険について
咽後膿瘍に適切なる外科的処置が,ただちに加えられなかつた場合の生命の危険度については成書に記してあることであるが,要約すれば,咽後膿瘍が拡大し隣接臓器への圧迫ないし炎症の波及によるものと,喉頭水腫,喉頭膿瘍の出現による窒息の危険,膿汁が深部を流下して側咽頭間隙の感染,これにより血管壁を沿い上行し頭蓋内合併症の危険,あるいは血栓性敗血症ないし血管破綻による出血死,あるいは縦隔洞の感染による化膿性肋膜炎,心嚢炎の危険,また膿汁が咽頭内に破れ出て誤嚥することによる窒息ないし嚥下性肺炎などの種々な重篤なる合併症が考えられ,また後者により敗血症などの全身化膿性感染症を続発することが考えられる。
それ故,他の疾患では説明のつかぬ,特に小児の嚥下困難,呼吸困難,喘鳴が続く場合は一応本疾患の存在をうたがい,咽頭後壁を視診,触診する必要がある。
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