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I.はじめに
組織の凍結には接着,炎症,固形化,壊死効果の作用があることはよく知られている所である1)2)。近年に至りこれらの作用をもつ凍結術(cryosurgery)が耳鼻咽喉科領域の各種疾患に応用されるようになり,その成績が各研究者らによつて発表されてきている3)〜6)。著者らも凍結術を耳鼻咽喉科領域の各種疾患に応用してみた成績を発表してきたが7)〜9),凍結術はその組織の受ける凍結感受性(cryosensitivity)が各組織によつて異なるために,たとえ同一条件の凍結術を各種の組織に施行したとしても,それらの組織におこる反応には大きな差がみられることは広く知られている所である。もつとも凍結感受性の高い疾患としては,血管腫,乳頭腫があげられている8)〜10)。今回著者らは凍結術を頻回に反覆する習慣性扁桃炎患者のみに焦点をしぼつて施行し,その後の経過を観察した。文献的に凍結術を扁桃組織に始めて施行したのはCahan11)のイヌを使用した動物実験が最初であるが,その後von Leden12),Hill13)らによつて慢性扁桃炎の治療に用いられ,それらの臨床成績が報告されている。わが国でも扁桃凍結術として動物実験では,土居・形浦14)の報告および臨床例として竹生田15)および石山7)の報告がある。多くの研究者はcryotonsillcctomyの表現を使つているが,この表現の適否は別として凍結術が扁桃組織に限局して使用することが可能であることを示唆している。
著者らは今回頻回にわたつて反覆してきた習慣性扁桃炎症例36例を選び凍結術を施行し,その後の経過を約3年にわたつて観察した症例について検討し,一応の結論をえたのでここに報告し,ご批判をえたい。
Thirty six cases of habitual tonsillitis were treated by cryosurgery. The following results were obtained.
1) Cryosurgery was proved as a safe surgical technique, and the lack of bleeding and lesser pain were the advantages of cryosurgery.
2) Cryosurgery was most useful for senile patients.
3) Long term follow ups (3 years) of thirty-six cryosurgical procedures for habitual tonsillitis revealed that the postoperative healing of the wounds was satisfactory with minimum scar formation. Recurrences of habitual tonsillitis within three years after cryosurgery was 17%.
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