特集 良性腫瘍
基礎
いわゆる良性混合腫瘍
馬場 謙介
1
,
木村 園恵
1
,
西田 一巳
2
,
山田 喬
1
1独協医科大学第1病理学教室
2国立栃木病院病理部
pp.809-816
発行日 1977年10月20日
Published Date 1977/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208565
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I.はじめに
総論でも述べられているごとく,腫瘍を良性,悪性に分けるのは便宜上ないし,慣習的なことにすぎない。良性と呼びならわされている腫瘍の中にも,潜在的に悪性の性格を持つているものが少なくない。この特集が今さら,良性の腫瘍を取扱おうとしているねらいの1つはこの点にあると思う。慣習的に(唾液腺)良性混合腫瘍と呼ばれている腫瘍はその代表の1つである。ここで扱う良性混合腫瘍は,文字通りの意味の良性の腫瘍でないばかりか,この点で興味ある腫瘍の1つである。上記の点に注目しながら良性混合腫瘍を総説的に解説するのが,本来の目的であるが,著者が国立がんセンターに在職していた時に検討し,すでに発表1)した知見をおりまぜて筆をすすめていく。著者のこの時の知見は良性混合腫瘍だけでなく,唾液腺腫瘍全般にわたつて整理されているが,そこで扱われている47症例のいわゆる良性混合腫瘍を時々借用する。
国立がんセンターの材料1)は,欧米の報告,きわめて最近の本邦の報告に比べ,数の上で決して多くはないが,いわゆる,良性混合腫瘍も含めて,唾液腺腫瘍は,少なくとも,潜在的には悪性であるとして,腫瘤の核出をさけ,必要にして十分な周囲健常組織を含めて,腫瘤を剔出するという,一貫した治療方針の下で治療された症例を集め,全症例に追跡調査がほどこされていることに特徴がある。
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