特集 良性腫瘍
臨床
耳の良性腫瘍
小池 吉郎
1
,
鈴木 八郎
1
1山形大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.821-831
発行日 1977年10月20日
Published Date 1977/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208567
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I.はじめに
耳鼻咽喉科領域でみられる腫瘍は良性,悪性,上皮性,非上皮性を問わず病理組織学的な種類が非常に多く,およそ病理学総論に記載されているものの殆どを含んでいる。しかし,その絶対数は必ずしも多くなく,したがつて統計的観察もないものが少なくない。特に耳に発生する良性腫瘍はその頻度はきわめて小さく,成書でもあまり記載がない。ために現在でも症例報告が行なわれている位である。しかしながら,耳の良性腫瘍でもその発生部位が側頭骨,およびその周辺にまたがる場合には病理的に良性であつても,臨床的に悪性ないしは早期に治療を行なわねば重大な予後を来たすものもある。その代表例としては聴神経腫瘍が挙げられる。また,顔面神経由来の神経鞘腫なども,顔面神経麻痺の予後に関してみれば早期治療が大切であり,鼓室粘膜あるいは頸静脈球より発生する傍神経節腫(頸静脈球腫瘍)などは放置すれば死の転帰をとる場合も多く,臨床医の早期診断,治療が重要となる。また,特殊な腫瘍としてhistiocytosis Xが側頭骨に発来することが稀にあり,他疾患との鑑別を問われる場合もある。本項では良性腫瘍で特に早期診断,治療で問題となる事項について,自験例とともに述べたい。
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