特集 良性腫瘍
基礎
粘液腫
牛込 新一郎
1
1聖マリアンナ医科大学第1病理学教室
pp.799-807
発行日 1977年10月20日
Published Date 1977/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208564
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粘液腫Myxomaは私どもには馴染の少ない腫瘍であり,たとえその言葉は見聞きしていてもその本体ことに発生母組織が判然としない。
Myxomaという言葉は凡そ110数年前にVirchow R. 21)により始めて用いられ,彼の有名な著書「細胞病理学」(1871年)の中で臍帯および相似の組織(粘液組織と命名)に由来した腫瘍と定義した。しかし多数例で臨床病理学的研究を行なつたのはStout A. P. 19)(1948年)で,星形の細胞(stellate cell)から成り疎な粘液様基質を呈する真正腫瘍で,primitive mescnchymeに類似していると定義した。これは胎生期にみられる原始間葉組織のことである。欧米では現在でも一般に独立した腫瘍として扱われ,特に顎骨1)8)10)15),軟部組織(中でも筋肉内のもの,intramuscular myxoma),心臓の例4)7)が比較的良く知られている。しかし,欧米でもたとえばWillis23)は線維芽細胞fibroblastと区別される"myxoblast"なる細胞はなくmyxomaは粘液変性を二次的に呈した線維腫に他ならないと考えた。
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