特集 症状からみた検査のすすめ方
嗅覚障害
梅田 良三
1
,
前坂 明男
1
1金沢大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.653-658
発行日 1974年10月20日
Published Date 1974/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208120
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I.はじめに
嗅覚は,第1脳神経に由来する感覚であり,その障害は単に鼻腔内の障害によるのみならず,頭蓋内疾患を示唆する一つの重大な症候であることもあり,他の脳神経障害と同様に十分な考慮がはらわれねばならないことは言をまたないが,現実は耳鼻咽喉科専門医であつても,とかく聴覚や平衡覚に比較し関心が薄いようであり,今日のように交通事故による頭部外傷が多発し,嗅覚障害が合併していることが多いにもかかわらず,患者からの訴えがないかぎり,積極的に患者に嗅覚障害の有無を問診し,嗅覚検査を実施しているものは少ないように思われる。また,患者自身も,視覚や聴覚の障害では容易に気付き,医師にただちに申し出るが,嗅覚障害では,必ずしも毎常日常生活においてニオイを感知しているとは限らないこともあり,かなり高度の嗅覚障害が起こつたにもかかわらず,本人は気付かず,相当の日数を経て偶然の機会に初めて気付くことがあり,甚だしい場合には自分の嗅覚脱失を2カ月以上も気付かずにいた症例も数例経験している。
以上のことから,特にわれわれ耳鼻咽喉科医としては,早期診断・早期治療の立場からも,嗅覚障害についてより積極的に取り組むべきであることを強調し,以下嗅覚障害の検査の進め方について順次述べる。
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