特集 症状からみた検査のすすめ方
悪臭鼻漏
内田 正興
1
1癌研究会附属病院耳鼻咽喉科
pp.659-663
発行日 1974年10月20日
Published Date 1974/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208121
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I.はじめに
鼻漏過多を苦にして耳鼻咽喉科医を訪れる患者は実に多いが,その中で特に悪臭ある鼻漏を主訴,あるいは主要症状の一つとして受診する頻度は必ずしも高いものではない。しかも自覚的にはともかく,他覚的にも悪臭を認めることはさらに少ないであろう。したがつて悪臭ある汚穢な鼻漏を診た場合,それはわれわれに「これはただごとではないぞ」という印象を与えるものである。事実それは重篤な疾患の一つのsignである場合が少なくないのである。
では悪臭鼻漏を主訴とする患者を診た場合実際にどのような検査をすすめて確定診断に達すべきであろうか?それは最新の検査器具を駆使し,熟練した技術をもつてしなければ診断できないであろうか? 答は否である。何故ならば悪臭鼻漏を呈する場合,症状が鼻漏のみということは少なく,診断をすすめていく上に示唆に富んだ各種の副症状をしばしば伴つているものであり,そのためわれわれが日常用いている検査手段,すなわち病歴,視診,触診,X線検査,穿刺洗浄などを綿密に行なうだけでも疾患の推察は十分可能なことが多いのである。そして悪臭ある鼻漏そのものの分析よりも,多彩な随伴症状の中にこそ決め手となるポイントが包含されている場合が多い。
以下「何処ででも」,「特殊な検査設備なしに」を念頭において悪臭鼻漏を解明してみよう。
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