鏡下耳語
耳鼻咽喉科の将来に対する不安
岡本 健
1
1国立東京第二病院
pp.206-207
発行日 1974年3月20日
Published Date 1974/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208042
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最近耳鼻咽喉科医を希望する若い人が少なくなつたという話である。このことが事実かどうかは別として,耳鼻咽喉科の将来について何となく抱いている不安について少し書いてみたいと思う。これは長らく病院勤務をしているための偏見かもしれない。
耳鼻咽喉科の特殊性とは何か,つまり耳鼻科医でなければできないこと,他の科の人では手が出せない領域ということから考えると,耳,鼻,咽喉といつた狭い見難いところに光を当ててみるという技術と,特殊な器械を使つて小器用にこれを操作するという点が考えられる。しかし現在耳鼻咽喉科医として診断を行なつていくためには,もつと広い範囲の知識と技術が必要であることはいうまでもない。それはたとえば神経耳科といわれる神経学の領域,形成外科的要素,頭頸部に限局していても外科的な知識,技術,鼻疾患と関連するアレルギーの知識,扁桃を中心とする免疫学的知識,内視鏡,音声言語の問題等々,あげていけばきりがないが,この中で耳,鼻,咽,喉というわれわれ本来の領域と考えられる部分でも,他の科と競合している部分が少なくない。
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