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I.はじめに
霊菌は腸内菌科に属し,好気性,グラム陰性の小桿菌で,その多くは赤色色素を産生する菌といわれている。霊菌は自然界には広く分布していて人体では大腸,皮膚,呼吸器,尿路系にしばしば見出されるがこの菌属の人体感染症はまれとされていたため長い間,非病原性菌として考えられていた。1913年Woodwaadら1)がこの菌属による人体感染症を報告して以来,この菌属による感染症が注目されるようになり,しばしば致命的な敗血症も惹起して死亡した例も報告された。しかしながら人体から分離された菌株でも動物実験の成績では毒性はきわめて弱いという報告が多く,最近一部では霊菌も人体に対して一次的な起炎菌になり得るという説もあるがこの菌の病原性について的確に評価することは困難だというのが現状のようである。ただ現在までのところ,霊菌感染症として報告された症例の大部分は他に慢性の疾患を有していて,長期にわたつて抗生物質,ステロイド,放射線照射などの治療を受けており,いわゆる,生体防御機構が弱まつている患者にこの菌属の感染例が多い点からみると交代菌症の成立に重要な役割をもつている一菌属のように思われる。
私たちは最近,4〜5年来,耳漏が持続している44歳の主婦の膿汁から霊菌を単独で分離し,霊菌感染症の成立について興味ある知見を得たと思われるので,報告,検討を行なつてみたい。
Serratia marcescens is isolated from the culture of the ear discharge which a woman, aged 44, had suffered for the past 4 or 5 years. Quite often this type of organism is found in specimen of culture obtained from the lungs, gastrointestinal and urinary tracts but in the field of ENT it must be regarded as a rare finding.
Serratia marcescens is considered to be as non-pathogenic but the present case may be an exceptional one.
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