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Ⅰ.緒言
手術用顕微鏡の発達とotomicrosurgeryの技術的進歩は慢性中耳炎に対する鼓室成形術や鐙骨手術,内耳開窓術などの治療成績向上に多大なる影響を与えたことは論をまたないが,他方新しい中耳,耳小骨奇形の発見が相ついで行なわれたことについても,その功績は大いに評価されなければならないであろう。外耳,鼓膜の正常な伝音難聴に対して手術的な操作が積極的に行ない得るようになつた現在,数多くの型の耳小骨,中耳奇形が報告されている。しかし,耳小骨奇形に加えて,内耳窓の奇形にまでおよぶ例は大変稀であり報告も少ない。
本症例は,耳介,外耳道,鼓膜は何ら異常を示さず,耳小骨もツチ骨,キヌタ骨は正常で,アブミ骨の両脚もほぼ正常な形態を保ちながら,アブミ骨足板および卵円窓が欠損した症例である。このように卵円窓の欠損を示す奇形で,アブミ骨両脚までは正常に保たれた症例は,非常に稀有であると思われ,現在までの文献にも例をみない。また,発生学的にも興味ある問題であるので,その胎生学的考察を加えて,ここに報告した。
During the course of operation for the correction of congenital conduction deafness on a patient, the absence of the oval window and the stapedial base was discovered. The remaining part of the middle ear structure the incus, malleus and both cruxcs of the stapes were found to be normal. Otherwise there was no further abnormality.
The patient was treated with removal of the remaining portion of the stapes and the establishment the oval window.
Postoperatively, the hearing acuity improved to 35-40 dB loss; whereas, preoperatively, it was 70-75 dB loss.
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