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I.はじめに
減衰振子様回転検査法(PRTと略す)はフランスでは日常検査法としてかなり行なわれているが本邦ではまだ原法は追試されていない。本邦で従来報告されているのは減衰回転検査法〔乗金15),松永(喬)13c)〕,振子様回転検査法〔松永(喬)13b,c),瀬戸口16)〕,および両者を組み合わせたともいえるPRTで〔松永(喬)13c)〕あるが,周期,椅子の振幅や所見のパラメーターなどの点で,原法のそれとはかなり異なつている。既にわれわれは原法について正常者での成績を報告したが14),この方法を各種症例に行なつているうちに従来の回転あるいは振子様回転検査法で得られない種々の所見を得たので,本報告ではそのうちのひとつとして,病的habituation(後述)についてとりあげた。
従来の回転検査法では反復検査による反応低減(response decline,RD)が著しく認められるが,振子様回転検査ではRDは比較的少ないとされている。PRTの反復検査では病的症例中のさらにある例にのみ,眼振数についてのRDのみならず,眼振の域値(眼振を惹起する角加速度刺激の最小値°/S2),振幅,リズムの規則性などにも変化がおこるのでこれらを一括して病的habituation(PH)あるいは前庭性habituationとよびRDと区別している。
PRTの臨床的応用はGreiner2a-f)らによりはじめられたが,PHは中枢性障害に特徴的所見であり,椎骨脳底動脈循環不全症,頭部外傷例,薬物中毒などに著明にみられると報告されている2e)。
われわれは同様な装置を試作し,既にPRTでは正常者にはPHがみられないことを確認している14)。そこで病的例にのみみられるPHの診断的意義を検討する意味で,めまい,平衡障害を訴えた152例のPRTを行ないこれらの所見と著者の一人野村がストラスブール大学病院にて検査し得た100例のそれとを比較検討したのでここに報告する。
By employing pendular rotation test, PRT, evaluation was made on pathologic habituation (PH).
1) PH was positive in 15 cases of the 152 cases (9.9%) tested. In 80% of cases with positive PH, there were central nervous system involvements. Among 58 cases of patients with vestibular disturbances of central origin, 10 cases (17.2%) showed a positive PH.
2) A positive PH was seen in cases affected with brainstem circulatory disturbance, brain tumor, head injury, drug allergy or in certain cases of Ménière's disease.
3) The possible origin of PH was assumed to be central from clinical examples, its resemblance to the mechanisms of habituation and other qualitative findings in PRT.
4) The Ménière's disease that evoked PH appeared to be the product of both, central and peripheral origin.
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