特集 最近の顔面神経障害の基礎と臨床
顔面神経吻合術—ことにその遠隔成績
中村 紀夫
1
,
塚本 泰
1
1東京大学医学部脳神経外科学教室
pp.809-815
発行日 1971年10月20日
Published Date 1971/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207700
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Ⅰ.緒言
その原因が外傷であれ腫瘍摘出後であれ,顔面神経の永久的完全麻痺は,単に患者にとつて,cosmeticな意味での苦痛だけではなく,眼・口の機能にとつても生活上少なからぬ不便をともなう。
したがつてこの完全麻痺を元通りに回復させることは患者の強い願いであるが,意識的にも無意識的にも顔面筋の機能を回復させるには,神経損傷部位における端々吻合以外には期待がほとんどもてない。しかし一歩退いて顔面の非対称や眼・口の機能に関する限り,顔面神経以外の運動神経中枢端を,顔面神経末梢に吻合することによつて,かなりの好結果を期待することができるのである。
われわれの教室においては,外傷性および小脳橋角部腫瘍摘出後の一側顔面神経完全麻痺を多く経験したが,前者についてはほとんど吻合手術を行なつていない。それは外傷性の場合往々にしてその後軽快することが多いからである。そこでもつぱら腫瘍の症例に基づいて,顔面神経吻合術の検討ことに遠隔成績について報告する。
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