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I.はじめに
粘膜萎縮病変の研究は生理的老人性変化1)や癌化2)3)4)などの問題と関連して重要な課題の一つである。耳鼻咽喉科領域にみられる萎縮性鼻炎は,かかる研究に豊富な資料を提供してくれる。ところで萎縮性鼻炎(臭鼻症)は内,外分泌の異常5)6)7),栄養との関係8),環境衛生の悪条件9)10)11)などによつて惹起されると考えられている。もしかくの如き全身的な要因が関与するならば,鼻粘膜の萎縮のみならず,他の器官粘膜にも当然萎縮病変が生じて然かるべきであろう。しかるに萎縮性鼻炎関係の文献では,全身的な粘膜素因についての研究および考察はみられるが,積極的に各種器官粘膜の検索を行なつた報告には接していない。
著者らは萎縮性鼻炎患者を対象にして,気管気管支(以下気管支とす),食道,胃粘膜の臨床的な各種検査を施行してみた。その結果,相当高率に呼吸器系の気管支粘膜および消化器系の食道,胃粘膜に萎縮病変が合併していることがわかつた。
本論文ではまず,気管支,食道,胃粘膜における萎縮病変の臨床像を,内視鏡,X線像および生検所見に基づいて述べ,さらに萎縮性鼻炎との合併率およびその病型との関係についても検討を加えた。特に萎縮性鼻炎の病型との関係では,粘膜素因の研究で重要視される若年者(20歳台以下)を中心として,副鼻腔炎関与の有無からⅠ次型,Ⅱ次型に分けて検討し,いささか考察を加えてみる次第である。
A patient with atrophic rhinitis complained of lower respiratory and gastric disturbances. The condition of these organs were examined by means of bronchoscope, esophagascope and x-ray which showed the mucous membrane of the trachea, esophagus and the stomach to be involved with atrophic degeneration.
These pathological changes were observed and classified in accordance to various age groups namely those below 20 years of age as group 1 and those above 20 as the group 2.
The younger group showed the degeneration to be established less profoundly than the older.
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