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Ⅰ.緒言
気管切開術は上気道閉塞に対する重要な救急的処置として耳鼻咽喉科専門医の特技の一つとして発達してきた。そしてその適応はすでに起こつている気道閉塞に対する救急処置としてのみならず種々の原因によつて術後に起こる気道閉塞の予防的処置あるいは喉頭のドレナージュとして適応が拡大されつつある。しかし,果してわれわれは予防的な処置としてやりすぎてはいないだろうか。術後ある期間を気管切開という手術的措置によらないで危急をしのぐことがてきればその方が患者にとつては幸せなことではないか。この反省がなされることは必要であろうと考える。また,気管切開の適応は,さらに下気道疾患にまで広く拡大されつつある1)。このことは,この手術がもはや必ずしも常に必要な局所解剖,正しい手術手技や術後管理に精通した耳鼻咽喉科専門医によつてのみ行なわれるとは限らない現状にあることを示していると考える。事実,外科領域においては特に新生児や乳幼児に頻繁に外科医によつて行なわれている。しかもカニューレ抜去困難症の頻発が注目され,新生児における気管切開術のあり方が論議されていることも見逃せない現実である2)。もらろんこの場合その手術を耳鼻咽喉科専門医が行ない術後管理して果してカニューレ抜去困難症の発生をどの位防ぎうるかは別の問題として考えねばならないが,当面のカニューレ抜去困難症を処置する立場にあるわれわれは,取り扱いに異常な苦心と,労力を要するこれらの症例をもつと安全に治療し治癒せしめうる方法はないかと考える必要がある。
最近,McDonald & Stocks3)によつて気管切開に代る方法として長期経鼻挿管法が推奨されており,また,Davenport4)は,これをカニューレ抜去困難症の治療に用いて成功している。われわれも少数例であるが長期経鼻挿管法を試み,第一は,耳鼻咽喉科領域での予防的気管切開術に代る方法として,第二はカニューレ抜去困難症の治療法として検討した結果,第一点については,必ずしも全面的にこれに代りうるものではないが,限界を知つて応用すれば無用な気管切開をさけることができること,第二点については大いに有効な方法であることを知り得たので報告する。
Prolonged nasotracheal intubation may be employed for the treatment of upper air passage obstruction and in selected cases it may obviate the necessity of tracheotomy.
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