ベッドサイドの看護
長期経鼻挿管患者とのコミュニケーションから学んだもの
柴野 千恵子
1,2
1神奈川立県看護大学校
2横浜市立大学病院整形外科病棟
pp.1050-1053
発行日 1976年10月1日
Published Date 1976/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917993
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はじめに
私はICUにおいてモニタリングを通しての看護のほかに,患者に対する積極的な働きかけはないのだろうかという疑問をもっていた.また言葉が出せないとき,どうしたら相手の気持ちを知り,自分の伝えたいことを相手に伝えられるかという疑問も同時に感じていた.
そうした中で長期経鼻挿管をしていて自分の意志を思うように伝えられないKさんを受け持った.Kさんの置かれている状況,表情のひとつひとつが私の目に見え,心の中にしっかりと受けとめられて,初めてKさんに対する看護ができたのではないかと思えた.挿管中のKさんと私という看護婦が,ある場面のコミュニケーション(ここでのコミュニケーションとは,送り手が記号を媒介にして知覚・感情・思考など各種の心的経験を表出し,その内容を受け手に伝える過程を言つている)を通して,それが成功したと思える部分と,そうでない部分を取り上げ再構成(私の言っている再構成とは,Kさんと私とのかかわりあいのなかで持った体験を,‘私の知覚したこと’‘私の思ったり感じたりしたこと’‘私の行ったこと’というように思い起こして再現したことである)という方法を用いてその違いを明らかにした.そしてその明らかになった違いを自分で認識することが,患者の立場に立ったニードを引き出すことにつながるし,またそのことが患者への援助を展開してゆく要素になることが分かった.
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