特集 最近の薬物療法と問題点
作用機序からみた血管拡張剤—現在ある薬についての批判的立場から
後藤 文男
1
,
秋山 実
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.785-796
発行日 1968年10月20日
Published Date 1968/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492204012
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Ⅰ.緒言
最近数多くの薬剤がその基礎的研究成果とともに,臨床面に続々と登場してきている。これらの中,その有効性が実証され長期にわたつて広く使用されるもののある一方,臨床的に無効であるばかりでなく,その副作用のために消滅していく薬剤も数限りない。血管拡張剤としてもここ数年の間に多数の薬剤が紹介され,その作用機序の解明が完全に明らかでないまま臨床的に広く用いられ,やや乱用の傾向さえみられている。
血管拡張剤は理想的には目的とする血管を直接選択的に拡張するのを本質とするが,実際にそのような血管拡張剤はまれで,大部分の血管拡張剤は同時に各臓器および末梢循環に多少なりとも影響を与え,しばしば予期せざる副作用を呈するものである。一般に血管のtoneは,自律神経系による神経性支配と,血管壁固有の収縮能の両者によつて調節されている。そこで,神経節遮断剤や,adrenergic receptor blockerとしての血管拡張剤および血管壁の平滑筋に直接作用する拡張剤が多数考案され,後者は現在臨床的に用いられている血管拡張剤の主流をなしている。このほかに血管運動中枢の鎮静による血管拡張を目的とした薬剤もある。血管拡張剤の作用機序は,このように大まかに三つに分けることができる。
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