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特集 薬物と精神療法
第2回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
薬物療法の批判的研究の立場から
Some Opinion Introduced from Critical Study of Drugtherapy
佐藤 倚男
1
Y. Satoh
1
1東京医大神経精神科
1Dept. of Neuropsych., Tokyo Medical College
pp.467-472
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201018
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I.はじめに
この特集では,それぞれに対して,一定の役割が期待されている。筆者への期待は,薬物信仰者であるらしい。薬物効果を信ずるものとして,そのいいぶんを話させてみよう,それに対して討論をしてみたいというのが,会長および司会者からの指名理由になつたらしい。このようなことになつた遠因は,精神療法の効果を信ずる人びとに対して,私が強の批判をあびせていると思われているからであろう。しかし私は,精神療法の効果を簡単には肯定しないのみではなく,薬物療法についても,簡単に,薬が効いたとは肯定しない。向精神薬にしても精神療法にしても,それぞれの信仰者が口にするほどには効果がないらしいし,いかなる対象に,どの程度に,どのように,どのくらいのあいだ効いているかについて,われわれはもつと確実なデータを集めてゆくべきだと考える。そのために私は,薬物の効果を調べているわけである。
薬物効果を調べているものは,薬物効果信仰者であるという受け取りかたは,単純素朴な受け取りかたであつて,ここにこれから述べるわれわれのデータは,薬物効果はたしかに存在するが,それは従来考えられていたよりも,はるかに低い効果であり,薬物効果以外の効果というものが存在することをも,同時に立証したといえる。
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