特集 形成と機能訓練
形成
食道形成術の進歩
中山 恒明
1
,
木下 祐宏
1
1東京女子医科大学附属消化器病センター
pp.1361-1371
発行日 1966年12月20日
Published Date 1966/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203703
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Ⅰ.緒言
1932年,私の恩師瀬尾貞信教授が外科学会総会で発表された当時の食道癌患者の手術死亡率は95.4%であつた(第1表)。1946年,私が千葉大学教授となつた当時,苦労して手術した患者が20年後の現在,元気で活躍している。そしてその当時から考えれば,外科手術手技は進歩し,麻酔技術は向上し,食道疾患に対する手術療法も比較的安全,かつ容易に行ない得る様になつた。しかし食道という特殊な立場から,ここに発生せる悪性腫瘍等によつて狭窄を生じた場合,これを根治切除する事は勿論,頸部から胸腔内を経て腹腔に及ぶ食物の通過器管としての,その役割を完全に果し得る様に成形し再建する事は,なほ多くの困難を伴い,しかも,頸部,胸部上中部,下部食道噴門部と,その病巣部位によつて,再建の方法も自ずと異なつて来る事は当然である。更に原疾患が,悪性疾患か良性の狭窄かによつて再建に対処する考え方も変えなければならない。
今回は特に私の行なつている食道形成術を中心にして,その最近の進歩を辿つて見よう。
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