- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Microtieの手術といえば数年前までは諦めていたといつてもよかつたのではあるまいか。従来行なわれてきていた手術は,いずれの手術書にも載つているように,頸部,顎下部または鎖骨下部から有茎のRohr-Lappenを作つて,しゃくとり虫式に上方に移し,存在している痕跡的な耳介の外縁に耳輪の形で移植するのであるが,この方法では,手術者は誰でも経験したと思われるように,耳介変形の軽度な例では,ある程度のものはできても,変形の強い例では,見るに堪える程度のものもできない。このようなことから,小耳症の手術は大学の臨床では一応は試みられていたが次第に行なわれなくなつていたようである。
私もこのようなRohr-Lappen式の手術を数例に試みたが,手術を行なつてよかつたと思われるほどの例はなかつた。このような耳介形成手術のまずさに比べて,人工樹脂によるProtheseの進歩は著しく,健側の耳介とほとんど区別できないほどの巧妙なProtheseができるようになつて,臨床家の関心はむしろその方に向けられる傾向が生じていた。私の当時の臨床でも,年頃の娘さんが,火傷で耳介を失い,何とかして耳介を再建してやらねばならないことが起こつたが,私にはこの娘さんの顔に適合する程度の耳介を作る自信はなかつたので,秋山太一郎先生に依頼してProtheseを製作することとした。その後Protheseの耳介は健側の耳介とほとんど変らないほどよくできてきた。しかし装着に問題があつて,取り付け用のバンドではProtheseは耳の位置に密着することが難しい。耳介は立派にできたが,恐らくそのままとなつたと思われる。最近もこれに類する患者の話をきいた。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.