特集 形成と機能訓練
形成
下顎骨,顎関節損傷の形成—機能保存又は回復を目的として
林 一
1
,
今井 利広
1
1東大医学部口腔外科
pp.1303-1314
発行日 1966年12月20日
Published Date 1966/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203699
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Ⅰ.まえがき
顔面の基底部を形成する下顎骨は,上顎骨とともに,審美的にも機能的にも重要な位置をしめている。
上顎骨は顔面の略々中央に位し,しかも周囲の骨と連続し,いわば保護された位置にあるが,下顎骨は位置的に顔面頭蓋の底を形成し,形態的にも突出しており,顎関節のみで頭蓋に附随し遊離の状態にあり,結果的に下顎骨は外傷をうける可能性が大きい。また下顎骨には側頭筋,内・外翼突筋,咬筋,顎二腹筋,頤舌骨筋,頤舌筋などの諸筋が附着し,相互にバランスのとれた状態を保つているが,何等かの原因,例えば下顎骨切除,下顎骨の完全骨折などで,このバランスが破れると,これら諸筋の収縮方向に骨片は転移し,顔貌の変形,咀嚼障害などをおこす。したがつて,一般の骨折においては,さほど問題にならないような僅かな骨片の転移でも,これが顔面であることにより観過すことのできない課題となる。
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