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Ⅰ.はじめに
メニエール病の原因として現在もつとも重視されているものは迷路血管の循環障害であろう。
しかしこれを惹起するメカニズムは多岐にわたつている。これらの原因の分析に際して症候を含めた病歴の分析が重視されるのは当然である。メニエール病の三大症候としてメマイ,耳鳴,難聴があるがこれらの症候の発現順序が異なり,メマイによつて既存の難聴が改善される一群をLermoyezが1929年に記載した9)。Williams16)によるとレルモワイエ症候群はメニエール500例中3例にすぎなかつたと報告され,その報告も現在までに調べ得た範囲で比較的詳細に検討し得るものは内外の症例合わせて20例内外である。メニエール病の中でも三大症候の揃つた典型的なものはともかくとしてメマイのないメニエール病とか,蝸牛症状を欠くメニエール病などの記載もみられるので,レルモワイエ症候群もメニエール病の1つの非典型例にすぎないのかあるいは独立した症候群なのかが問題である。従来の報告例では既存の難聴がメマイ発作によつて改善される例が多くわたくしどもの経験例も同様であるが,妊娠を契機に悪化した難聴がしばらく経てレルモワイエ症候群を呈した点が従来の報告例にみられず,詳細に検索し得たので文献的考察を加えてここに報告する。
Lermoyez's syndrome was recognized in a woman, aged, 29, who complained of dizziness and increased deafness as the patient became pregnant. Examination showed iron deficient anemia, inner ear deafness and disturbance of autonomic nerve function. Some improvement was seen by parenteral administration of 7% sodium bicarbonate solution and nicotic acid. The latter was also given by mouth.
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