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Ⅰ.はじめに
本邦において,副腎皮質ホルモンが耳鼻咽喉科領域に使用されてからまだ日も浅いが,副腎皮質ホルモンが応用される場合が次第に増加しつつある現状である。
副腎と疾病との関係についての業績はThomas Addison(1855)の発表をもつて嚆矢とするもので当時青銅病(後年彼の業績と名誉を讃えAddison氏病と命名)といわれていた一定の症状を呈して死に至る原因不明の疾患について,その剖検所見から本疾患ではいずれも副腎が破壊されていることを認め,副腎との密接な関係にあることを報告したことに始り,さらに1856年Brown Séquardが動物実験において両側副腎摘出例ではいづれも死亡するが,摘出後に再び副腎を移植することによつて生存し得ること,さらに髄質のみの摘出では異常を来たさないが皮質の摘出によつて始めて死亡に至ることを確め,それまで機能不明であつた副腎が生命維持に必要不可欠の器官であることが判明し,副腎皮質の研究が進められついに1930年,Hartman,Swingle&Pfifferらにより牛副腎からAddison氏病に有効なエキスの抽出に成功するに至つた。このように副腎皮質の研究目標はAddison氏病治療に端を発しcortisonの発見にまで至つたのであるが,1949年Henchがcortisonが抗リューマチ剤としての卓効を示すという発表を契機として副腎皮質ホルモンの研究は急回転してリューマチ疾患の治療薬に向けられるようになり,臨床研究が俄然盛んとなり,さらに製造過程の工夫から量産的製造が可能となり,その研究に拍車をかけたのは周知の通りである。一方cortisonが広く使用されるようになつた反面その好ましくない副作用が観察されて来たので治療薬品としての改善研究が急務の目標となつて来た。副作用の大部分は皮質ホルモンが有する代謝作用の結果現われるもので,正常の代謝機能が誇張された現われに過ぎない。すなわち代謝作用をその特微からみると糖質代謝作用が強いgluco-corticoidと電解質,塩類代謝作用が強いmine-ralcorticoidとに分類出来るが,その副作用を考慮し,glucocorticoidの有する代謝効果と抗リューマチ効果とを分離して,抗リューマチ効果のみをもたせるか,glucocorticoid効果を極カ抑えて抗リューマチ効果をいかにクローズアップさせるか,その化合体の発見を目標とする研究が始り,その結果1954年抗リューマチ効果がcortisonの4倍強く,しかも臨床的に有効な用量では副作用(NaおよびKの貯留効果)が現われないというprednisone,prednisoloneの発見となり,さらに6α-Methylprednisolone(1956),16α-hyd-roxy-9α-fluoroprednisolone,Triamcinoloneなどが生れ1958年Oliveto,Sarettらは16α-Methylatedsteroidの中でもとくにDexametha-sone(9α-fluoro-16α-methylprednisolone)が副作用のほとんどない優れた特性を有することを発見した。この生理作用は肝グリコーゲン試験でhydrocortisoneの17倍,抗炎症作用は20〜40倍抗リューマチ効果はprednisoloneの6倍とされている。構造式は第1図のごとくで,C1C2の間の二重結合により,これまでの副腎皮質製剤に比し,抗炎症作用が増強され,C9のアルファFの出現はさらにこの作用を増加させ,C16にα-methyl基が導入されることにより抗炎症作用の増強にもかかわらずNa貯留作用がほとんどないことが判つたのである。
An attempt was made to avoid a general administration of adrenocortical steroids by limiting their use to local applications. For this purpose dexamethasone, Dectan, which is considered as having the least side-effect, was chosen.
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