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近年各科領域において器質的変化を証明出来ない心因性の疾患が多くなつてきているようでありその対策には重要な関心が払われている。耳鼻咽喉科領域においても特に所謂咽喉頭知覚異常症と呼ばれて咽喉頭部の異常感,異物感,狭窄感等を主訴に来院する患者は決して少なくなく,又これ等の患者は最近新聞,ラジオ,雑誌等による癌に対する知識の普及により年々増加の傾向がある。しかも外来診療にあたつて異常所見が全く得られないにも拘らず訴えが頑固であり,自覚症状に対して異常所見が認められないという診断のみでは決して患者は満足せず,かえつて症状に対する不安を倍加させたり,病医院を転々歴訪したりして患者はもとより医師もその処理に苦慮するものである。このような精神身体症的な疾患に対しては向精神剤の適応が考えられ,なかでも精神安定剤としてReserpine,Chlorpromazine,Meprobamate,Ectylurea,Phenothiazine等の化合物が各科領域に使用され本症の治療に画期的な改革がもたらされたが,しかしこれらの従来の製剤はその効果や副作用の点で尚不十分なものを残していた。最近スイスRoche研究所のSternbachにより合成されたChlordiazepoxide(Librium)は,従来のかかる薬剤とは全く異つた化学構造を有し又薬理学的にも鎮静作用,筋弛緩作用,動物の馴化作用を有し,臨床的に不安,緊張,恐怖などを基調とする精神神経的及び精神身体的疾患に利用し優れた効果があるといわれている。今回我々も所謂咽喉頭知覚異常症に対してChlordiazepoxide製剤のBalanceを使用し,良好な成績を得たので報告する。
For the treatment of patients who persistently complain of abnormal sensations in the throat a new from of tranquilizer, chordiazepoxide (Balance) was used. The agent proved to be effective in 82.6% of cases in allaying these complaints and appeared to be without any side effects.
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