上顎洞手術に対するイプシロン注の使用経験

THE USE OF IPSILON PARENTRALLY IN SINUS? OPERATIONS

　Ⅰ．はじめに

　耳鼻咽喉科領域の手術において，その多くは，術野が狭小，かつ骨組織の手術でもあるという特異性より，出血対策は重要であり，術者の常時，関心がはらわれるゆえんである。慢性副鼻腔炎手術においても，その例外ではない。それが円滑に行なわれるかどうかを左右するものの一つに，出血の多い少いがあげられる。手術時，出血が少なければ，手術時間も短く，術後の経過にも好影響をもたらす。

　対象ならびに使用方法：慢性副鼻腔炎手術のうち，鼻内手術は出血量測定に正確を期しがたいので，犬歯窩粘膜切開より顔面骨壁を削開，下鼻道に対孔形成，上顎洞内の粘膜を剥離除去するまでの出血量を測定した（その測定は重量法による）。

The use of ipsilon as an anti-hemorrhagic agent has been tried in sinus operations with favorable results by reduction in the amount of hemorrhage. The results of the administ-ration of the agent were measured in terms of bleeding time, coagulation time, number of platelets and by prothrombin time.