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Ⅰ.緒言
周知の如く「ロイコプラキー」とは粘膜上皮の異常角化充進により粘膜に白斑を生ずる疾患で,Merklen(1881)により初めて「ロイコプラキー」なる名称が提唱され,本症が一種の前癌状態であることは近時欧米に於いて注目され,既に成書にも記載されている所である。乍然,喉頭「ロイコプラキー」に関する報告は意想外に尠く,殊に本邦に於いては殆んど本症に関する報告例は見られない。一方,この「ロイコプラキー」なる術語の使用は人により区々で,粘膜上皮が前癌性変化を組織学的に示す揚合にのみ使用したり,臨床的に見られる白斑を広く「ロイコプラキー」と呼ぶ人もある。又,角化の程度の低いものをHyperkeratosis,進んだものをLeukoplakiaとして区別する人もあるが,何れにしても其の内容・境界は判然とせず,欧米の文献に於てもKeratosis,Hyperkeratosis,Leukoplakia,Pachydermiaを同一疾患と見做すものが多い。
我々は最近,広島大学医学部耳鼻咽喉科教室外来に於て,喉頭「ロイコプラキー」の2症例に遭遇し,特にその1例に於て長期に亘る観察の結果,遂に組織学的に悪性化の像を示したので,興味ある症例と考え,茲に報告する次第である。
Two cases of leukoplakia of the larynx are reported; both patients were men, aged 70 and 56 respectively. With treatment the leukoplakia on the vocal cord on one side disappeared completely but on its opposite one the lesion appeared to be shifted in its position and at the same time developed a concerous degeneration which was proved by biopsy examination.
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