- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
口内乾燥を伴う疾患の中には真性口内乾燥症である場合と,他疾患の一分症である場合があるが我々耳鼻科医のみならず他科の医師もとかく重症疾患の一症状として考え易く,しかも一過性でなくまた重大な疾患の一分症でもない真の口内乾燥症の症状である口内乾燥の訴えを軽視しがちである。また反面口内乾燥の訴えを問診により聞き出す事によつて他の重大な疾患を見つけ得る事もあるので口渇を訴えた患者については先ず問診既往歴主訴等を詳細に聞き出し,次いで視診触診唾液腺造影法(以下唾影法と記す)によつて該疾患との関係を知る必要がある。私は過去2年半の間に約64例の唾影法を施行し,それが唾液腺疾患の診断に欠くべからざるものであることを知り得たのでその概略を述べる。耳下腺は内分泌腺でありながら他の内分泌腺に比すれば未だ不明な所もあり且つ他の内分泌腺との関連性等についての詳細な記載も少い。また耳下腺腫瘍についての唾影像にも同様な事がいい得る。しかし本稿においては他病のない事が明らかな例のみについて述べ,他の重要な疾患を伴なえる症例の唾影像についての若干の知見は別稿に述べる予定である。
唾影像の分類は北村教授のそれによつた。すなわち1)腺因性,2)心因性,3)反射弓性,に分類してみると,腺因性口内乾燥症は56例で断然多く心因性がこれに次ぎ,中耳根治手術後或は鼓室成形術後にみられた反射弓性のものが3例で,真の反射弓性のものは殆んどみられなかつた。これらの各々について数例の概略を述べると共に私自身思いを新たにし且つ諸賢者の御批判を仰ぐ次第であります。
Visualization of salivary glands was effected in 64 cases whose symptoms pointed towards various degrees of xerostomia. Among th-ese cases 56 showed glandular disturbances, 5 cases due to cardiac disturbances and 3 cases due to reflex disturbance but, there was no case that seemed to be a typical reflex in origin. Glandular disturbances appeared to prominent in numbers among the females and more in those who have lost their teeth.
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.