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局所の止血作用を期待して用いられたアドレナリンの止血作用が,注射直後に発現せず早くても15分,甚しい時は数時間後に出現することに疑問を抱いたベルギーのDerouaux & Roskam(1937)の研究により,このような止血作用はアドレナリンの酸化生成物であるアドレノクロームに基くことが明らかにされ,その製品化が試みられた結果不安定なアドレノクロームをSemicarbazideと結合させた安定な化合物Adrenochrome semicarbazoneが生れた。このものは毒性の極めて弱い物質で,その作用はアドレナリンと異り,交感神経系に対する作用,即ち血圧上昇作用は全くないが,毛細血管の透過性の低下作用と強力な止血作用を有する優れた止血剤として広く臨床上に用いられて来たが,水に難溶性のために溶解補助剤としてサリチル酸ソーダ等を加えて用いられている。その為大量投与が困難なこと及び溶解補助剤による副作用が出現したりして不便であった。この点を解決する為に水溶性の新誘導体アドナ(AC-17)が創作された。これはAdrenochromesemicarbazoneのSodium Sulfonateで先のものの50倍の水溶性を有する。更に持続性を持たせる為にP. V. Pを加えたデポ型アドナ(AC-17)を田辺製薬より提供を受け,我々はこれを扁桃剔出術に使用して良好なる結果を得たのでここに報告する。
The hemostatic effect of adrenchrome drug Adona (AC-17) was tested in cases of tonsillectomies. In 50 cases of tonsillectomies 2cc 30mg of adona was given by intramuscular route preoperatively. The amount of bleeding at the time operation was very small in 19 cases, small in 26 cases ; moderate in 5 cases ; and large in none. Postoperative bleeding was very small in 32 cases ; small in 14 cases ; moderate in 3 cases ; and large in 1 case.
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