第10回綜合医学賞入選論文
耳鼻咽喉科自律神経学概論
岩田 逸夫
1
1名古屋第一赤十字病院耳鼻咽喉科
pp.927-937
発行日 1960年11月20日
Published Date 1960/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202556
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I.緒論
自律神経の研究は既に旧くからなされて来たが,1800年仏のBichatが動物体内の生活を対外的生活と栄養的生活とに分け,前者を支配する動物性神経に対し,後者を支配するものを臓器的神経と命名した。其後臓器的神経系に代つて栄養性又は植物性神経という名称が用いられ,一般的に自律神経系と同意味に使用されたが,自律神経系なる名称は脳脊髄神経に比し脳支配から比較的独立しているとの考からLangleyが1898年に命名したものである。然しL.R.Müllerが1931年生活神経と名付けている如く,生体の生活現実に関係が深いものである。
Langleyは1921年彼の著書で「自律神経とは神経細胞および神経線維からなり,是等は多核横紋筋以外の組織に遠心性刺激を伝達するものである」と定義している。而してこの自律神経を解剖学的見地から交感神経系と副交感神経系とに大別した。然しながらこの定義は今日では変動を余儀なくされている。即ち氏は刺激伝達は遠心性としているが,今日では多くの学者により求心性線維の存在がみとめられている。
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