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I.諸言
職業性難聴を含めいわゆる神経性難聴あるいは感音系難聴と称している疾患の治療に関しては,これまで各種各様の見地にたつて数多くの治療法が発表されてきた。すなわち,1879年,Politzelの塩酸ピロカルピン療法を始めとして,Speranskyにより創唱された髄液パンピング療法,V. B1大量投与療法,頸部交感神経X線照射療法,同ラジウム療法,アリナミン療法等々がそれである。一つの療法がある種の難聴に有効であつても,それが普遍性を持つていないことはどの療法にも共通した点であり,未だ真に適確な治療法が見出されていない現況である。而しながらコルチ氏器の一部に器質的変化をともなつた疾患においては,従来の医学的常識をもつてしてはすでに不可逆的に近いものであり現在尚,耳鼻咽喉科領域の最も困難な問題の一つとされている。これすなわち他のあらゆる疾患と同様,早期発見,早期治療の必要な所以である。
我々は某電報電話局電話交換手52名の精密聴力検査を行う機会を得,その結果見出した潜在性難聴13例に以下述べる方法にてナイクリンを投与したところ,見るべき結果を得たので報告する。
Wada and Kuwashima made hearing tests on 52 individuals women employed as tele-phone operators. They found 13 cases (25%) of functional deafness among them. These cases were treated by means of Nicrin a compound of nicotinic acid derivative. The patients were divided into two groups ; to one the agent was given through parenteral route and the other by mouth. Good recovery of hearing was attained in both groups alike.
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