--------------------
萎縮性鼻炎に対するナイクリンの治療効果について
桃井 基夫
1
,
東郷 美代
1
,
国分 昇
1
,
国本 鎮雄
1
1札幌医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.1002-1005
発行日 1958年12月20日
Published Date 1958/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202139
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
萎縮性鼻炎は,古くプラトン,アリストテレスの時代から論ぜられたといわれる疾患で,爾来これに対して,あらゆる方面からの追求が行われて概念の変遷を経て来ている。その成因に関する代表的な説をあげても,細菌説,局所炎症説,内分泌説,自律神経説,ビタミン説,アレルギー説,体質説などと多種に亘り,又,これら諸説に即応して種々の治療法が考案されて,行われてきている。その一々を挙げる事は成書に譲るが,結局,その本態は期待し得る治療法も定まつていない事は衆知の通りである。成書に誌されている治療法を概観すると,薬剤,物療などによる所謂保存的療法と,鼻腔内の形態を変化させるべく行われる外科的療法に大別されるが,日常我々が実際に診療に臨んで治療方針をたてる場合,もとより症例によつて決定されるべきものであろうが,一般に,外科的侵襲を加える前に,通院で比較的平易に行い得る二,三の保存的療法を試みるのが普通であろうと思われる。この保存的療法の一つとして我々は最近ニコチン酸製剤の投与を試み,些少の知見を得たので報告する。
ニコチン酸は,従来Pellagraの特効薬として知られてた物質であるが,その副作用に,投与直後,顔面紅潮の来る事から,此の薬剤に体表面及び脳の血管拡張作用のある事が知られ,これまで顧みられなかつたこの副作用の利用が考えられるに及び,欧米では夙に頭痛,卒中後遺症,眩暈,耳鳴などに用いられていたが,本邦でも近来,脳神経外科,皮膚科,耳鼻咽喉科,内科などの各分野において夫々の立場からこれの応用が試みられ,その治療効果についての報告も漸くあらわれてきている。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.