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第6回国際耳鼻咽喉科学会出席記(2)
西端 驥一
1
1慶大
pp.486-489
発行日 1959年6月20日
Published Date 1959/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202264
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同じ飛行機にストレス学説で世界に有名なカナダのセリエ博士が乗つていた。一応の挨拶をする。疲れたまま愉快でない睡眠に入つた。
まだ暗い午前3時ウエーキ島に着陸。羽田から約8時間飛んだことになる。睡い眼を見張つても薄暗くて周囲がよく判らないが平坦な小島のようだ。空港と云う程の設備はなく只の野原見たいなものであるし,アメリカの軍用機の姿もなく物淋しい。待合室は簡素で土人の建物を少し文化的に手を加えた程度である。この島は日本の大鳥島(?)であつたと思うが今はアメリカのものだ。戦争中は日本の海軍の重要な足場であつたのに……と口惜しい気もするが疲れた頭脳にはこの感傷も淡くかすめただけであつた。灌木のある海岸に立つと広い太平洋の波が沖の方から無心に寄せては返している。薄暗は刻々にうすれて夜が明けてゆく。流石に熱帯で暑い気配がする。
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