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耳鳴の自覚は環境の如何や個人の感受性に大きく左右されているが,耳鳴を自覚していてもそれを苦痛として感ぜずにいるものも尠くない。又耳鳴の存在を強く苦痛に感じて受診してくる人も多い。後者が所謂耳鳴患者と呼ばれるものであつて治療の対象として甚だ困る例である。このように耳鳴は一つの病的耳症状でありながら症状として訴えられ方が一定しない。これは個人の感受性や環境の如何にもよるが又耳鳴の成因が不明で各種の疾病の症状に合併して現われてくることによる。よつて著者等はかかる耳鳴を主訴として受診する患者が耳鼻咽喉科疾患患者のなかに如何なる割合を示しているか,又耳鳴を主訴としていないが種々な疾患の症状に合併している耳鳴は如何ほどの頻度に見られるかを特に主訴としての耳鳴の訴えられ方から検討した。この観察に用いた資料は昭和30年及び31年に長崎大学医学部耳鼻咽喉科外来を訪れた患者5476例に就てである。
The role of tinnitus in relation to ear dis-eases in general is investigated.
(1) Tinnitus was found to be the chief com-plaint in 317 of 3,386 of ear diseases exs-mined, (9.4%).
(2) Many patients failed to complain of tin-nitus as being the chief symptom whereas it was revealed later because other sym-ptoms, such as, vertigo, hard of hearing, fullness of ears and ear-pain, were more outstanding in the subjective disturbances.
(3) Complaints of tinnitus alone being made in spite of findings of hard of hearing in the same patient were found in 153 of 317 cases.
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