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緒言
われわれの感覚器の機能にはかなりの個体差があるという事は,日常諸種の事柄から容易に想像できる。しかしその実態を明確に指摘する事は多くの場合困難であり,特に味覚,嗅覚などについてのこの種の研究は少ない。
近年,Fox(1931)が,Phenyl thio-carbamide(以下PTC)に対し,苦味を感ずるものと,全く何の味も感じないものゝ別のある事を偶然の機会に発見し,次でBlakslee,Snyder(1932)らによりこの個体差の分布状態が人種によつて異なつて現われる事が知られてから専ら人類遺伝学の分野でこの研究が進められていたが,最近は法医学的に親子鑑別などにも応用せられるに至つている。著者は或特定の化学物質に対する味覚が,個体によつて顕著な差を以て現われるという事に,耳鼻咽喉科領域における感覚器の問題として興味をもち,これの追試を行い,同時に従来甘いものの代名詞のようにいわれているサツカリンにおいても人によつて甘味の感じ方が異なつたり,或人が苦味或いは他の不快味を覚えても他の人がそれを感じない場合があつたりして,そこに相当の個体差が考えられるため,前記のPTCによる調査と平行してサツカリンによる味覚調査を閾値法によつて行つた。
Fifty individuals are chosen at random to be used as subjects of threshold test concerned with tastes, bitterness with phenyl-thio-carbamide and, sweetness and bitterness in connection to saccharin. With those who experienced bitter taste towards phenyl-thio-carbamide and saccharin on one hand and those who had reported some other taste sensation on the other, the possible interrelation and connection between these two groups were investigated.
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