今月の主題 再灌流療法時代の急性心筋梗塞診療
再灌流療法
PTCR
石川 欽司
1
1近畿大学医学部・第1内科
pp.63-65
発行日 1990年1月10日
Published Date 1990/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900020
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心筋梗塞は冠動脈に血栓が生じ,血流が遮断されるために生ずるとされている.冠血流が杜絶すると心筋が壊死(necrosis)に陥るが,壊死はその冠動脈の支配領域の中央の心内膜側にまず発生し,時間が経つにしたがい,心外膜側へ,また,周辺へと波及する(wavefront現象1)).イヌ実験では冠閉塞20分後で心内膜側に壊死が生じ,その後周辺に波及する.壊死がすべてに拡がらないうちに血栓を溶解し,血流を再開させえれば,壊死に陥るべき運命の心筋を救済(salvage)することができよう.これが心筋梗塞に対する血栓溶解療法(coronary thrombolysis)の原理である2)(図1).
この考えに基づき,主としてヨーロッパでは1970年前半より臨床研究がなされていたが,発症後時間を経過した症例を対象としたり,ストレプトキナーゼ(SK)使用量が少なかったりしたためか,効果は不明瞭であった.1979年RentropおよびGanzらは,発症3時間以内の心筋梗塞に冠動脈造影(coronary angiography;CAG)を施行し,SKを梗塞の責任冠動脈(infarct-related artery)内へカテーテルを介して注入し血栓が溶解することを示し,その有効性を証明し,血栓溶解療法の幕明けを作った.
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