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開口すれば真先に認められるべき筈の口蓋垂が存外疎んぜられているのは不思議な位である。これは口蓋垂其物の生理的意義が少い事や,其両側に口蓋扁桃なる実に厄介なる代物が存在していて,その方に注意が集中される為ではあるまいか。しかしこの口蓋垂にも周囲組織からの波及性疾患のみでなく,単独性の炎症,良性悪性の腫瘍が稀ではあるが発生し,又分裂性口蓋垂が程度は種々であるが注意して観察すればしばしば認められる。これは口蓋畸形のMikroformとして歯列不整,異常口蓋と共に畸形の研究者から重視されている。又最近林氏は鼾の原因の一つとして巨大なる口蓋垂を挙げ,手術的に短縮して非常によい結果を得たと報告している。要するに,我々臨床医は日常の診療に於いて今少し口蓋垂にも注意を向ける必要があるのではあるまいか。
茲に報告する1症例は全く別の主訴で来院したものであるが文献上未だ記載をみざる異形とも云うべき分裂性口蓋垂であって,しかも其先端部から長さ約2糎の口蓋垂に酷似する組織(乳嘴腫)が下垂していながら今まで本人は勿論医師も気付かなかつたものである。
A case of bifurcated uvula with a growth of papilloma of considerable size on the tip of one of its arms is reported. The growth was shown to be in contact with surrounding structures like lingual radix, palatal tonsils and the faucial arch but the patient himself was incognizant of its presence.
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