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一般に創傷の治癒に赴く条件は,局所の安静,感染防止,全身の栄養であることは抗生物質の発達著しい今日に於ても厳然たる事実であるが,この3つの条件は又手術創の治癒に於ても同様で治療の方針も又此の線に添つて行なわなければならないことは当然と云えよう。
吾が耳鼻咽喉科,気管食道領域に於ける手術は口腔或は食道が対称となる機会が極めて多い。而して口腔,食道には何れも飲食に大切な場所であり,此の飲食物が巧に摂取される時は創傷治癒に必須な栄養の摂取も又うまく行くわけであり,ここに又吾が科領域の手術の困難さが存すると云えよう。例えば,食道癌切除の場合は勿論であるが喉頭全摘出術の際にも食道全壁に縫合を置き,此の縫合部治癒状態が此の手術の成否に大きい関係を有し,食道縫合部の治癒は即ち患者の治癒と云つても過言ではあるまい。而して食道縫合創の治癒が完成される迄の相当期間の栄養摂取は経口的に飲食することは禁じられ,主として鼻腔ゾンデによる流動食の摂取に委ねられて居る状態であるが,此の鼻腔ゾンデには極めて細い尿道カテーテルが用いられるのが通例である。然るに,この言わば通例となつて居る鼻腔栄養法も患者の治療に当つては種々の不利な点が存在して居る様に考えられるのである。1)即ち鼻腔ゾンデに通常用いられて居る細い尿道カテーテルによる流動食のみの摂食では充分な栄養摂取は到底期待出来ない。2)鼻腔ゾンデの挿入に当つては患者に相当な苦痛を与える。特に鼻中隔畸型,肥厚性鼻炎,慢性副鼻腔炎等の鼻疾患が存在する場合はこの挿入の苦痛は倍加される。3)最も重大なことと思われるのは鼻膣ゾンデ挿入の度に食道縫合部,下咽頭壁縫合部等にその先端が当り,創画を傷つけ,時には穿孔を来たす危険もあり又術創の安静も保たれない。たとえ鼻腔ゾンデを留置カテーテルとして残置しても縫合部を摩擦する器械的刺激のため治癒条件に著しい障碍を与える事は想像に固くない。4)鼻腔ゾンデ挿入に当つては人によつては烈しく“くしやみ”の発作をおこすこともあり,又抜去に際しては往々カテーテル中に遣残した残渣によつて創面が汚染される。5)人手(特に医師,看護婦)を要して煩雑である。等の幾多の欠点である。
Hishiyama and associates advocate the use of the method in which gastrostomy is esta-blished beforehand prior to attempting surgical correction of celft palate or laryngectomy in cases of laryngeal cancers: sigular purpose of the former procedure being the facility with which the patient may be adequately fed. Particularly is such a procedure found to be satisfactory in cases of largngectomy in that the laryngectomy wound might be afforded with a complete rest and protection even when the patient is given ample amount of nouri-shment: the healing time is shortened and within 5-7 days it is possible to re-establish the oral feeding.
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