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結核菌によつておこる喉頭病変は臨床上,病理組織学上,種々に分類せられる。即ち発生機序により原発性喉頭結核と続発性喉頭結核を分類し,臨床所見若くは肉眼的所見により滲潤型,潰瘍型,軟骨膜炎型及び結核腫を分類する。以上のmanasseの分類の他に,初期喉頭結核病変として発赤型を称える学者も少くない。但し著者は喉頭結核病変の組織構築学的所見の動的観察を重要視して,之を滲出期(充血,白血球及び漿液遊出)増殖期(類上皮細胞,巨細胞増殖,線維母組織増殖)瘢痕期(結合織線維増生)に区別するのが妥当であると信じている。私のこの考えによれば喉頭結核症も他の細菌感染症と本質的に同一機転によるものであり,古来慣用語たる特種炎症なる範疇を設ける必要さえなく,極めて簡単な同一原理で統合されるからである。因みに古くから喉頭に発来する結核性病変に喉頭結核症と喉頭狼瘡を区別していた。両者は臨床像に於ても,経過に於ても,予後に於いても相当顕著な差異のあるのが普通であるが,共にKochにより結核菌によつて惹起せられる疾患たることが立証せられて以来は,臨床医家の間でもこの鑑別診断を重要視する者は稀有となつた。
喉頭結核腫は上述の如く喉頭結核症の一病型である。本症は一般に喉頭結核の素地の上に発生した腫瘍状増生組織或は結核性変化を伴つた腫瘍状組織増生と定義せられている。しかし喉頭結核腫として報告せられた症例の組織学的所見を比較検討すると,その成績は多種多様で一定しない。因みに喉頭結核腫は我国では比較的稀有で,増田例,春日例その他で8報告例を算えるに過ぎない。しかし西欧ではAvellisの20症例を始め多数の報告がある。従つて我国で本症が稀有なことは,人種的差異に基くものでないかと思われる。又本症が如何にして発来するかに関しても,学者間に所説の一致がない。しかしこれらを通覧すると大体次の様な諸事項が説かれている。
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