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慢性副鼻腔炎に対する蛋白分解酵素(ナガーゼ)の応用について—第1報
山崎 可夫
1
,
池田 裕彦
1
,
西郡 正
1
1東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科教室
pp.958-961
発行日 1957年12月20日
Published Date 1957/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201904
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緒言
治療の進歩発展を回顧してみると,古くは対症的療法が専ら行われたのであるが,時代の変遷につれて疾患の原因を究明する研究が盛んとなり,それに対する根本的治療に努力が払われる様になつて今日に到つた。すなわち,化膿性疾患に対する治療の進歩発達はサルフア剤の発見より遂に抗性物質の発見となり,治療は急速かつ長足の進歩を遂げるに到つた。ところがこの細菌学的根治療法とはやや異なる観点に立脚して酵索を利用しようとする試みが開始されている。因みに,酵素を治療に利用しようとする考えは比較的古くからあつたのであつて,18世紀すでにJohn Hunterが壊死組織の消化作用に利用している。
従来治療のための酵素製剤としてはTrypsin製剤とStreptodornase製剤とがある。Typsin製剤は胼々のTrypsinを精製したものであつて,このTrypsinはPurkinjeおよびPappenheim(1836)によつて知られNorthrop and Kunitz(1932)により結晶として分離されたが,実際に治療面へ応用されたのは最近のことであつて,Roettigおよびその共同研究者(1951)が膿胸に使用したのが最初である。他方Streptodornase製剤はTillett(1933),Christensen等の研究に始り以後Berry,Read等により,さらにはTrypsin製剤と同様我国においても主として外科領域において効果を得ていることは文献の報ずるところである。
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