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緒言
慢性副鼻腔炎は吾科領域に於いて最も多い疾患の一つでありながら,今尚根治するには中々困難であり,而もその成因は副鼻腔の細菌感染のみを以てしては解決し得ない点を多く含んで居り,従つて現在各方面から研究されている。吾々1)もその一端として慢性副鼻腔炎患者のVB1の状態を知るべく九大の沢田教授2)3)4)がVB1不足の状態を知る為作つた尿中焦性葡萄酸(以下焦酸と略す)呈色反応を応用して検索し,第1報として報告した。即ち第1表に示す如く慢性副鼻腔炎患者44例中36例(81.8%)が陽性であり,陽性例中根治手術後30.4%に反応の陰転が見られた事,陽性例にVB1,VK,硫酸アトロピンの負荷試験を行い,約50%に反応の陰転を認めたが,他の50%は陰転せず,此等に就いては其の本態が尚不明で,僅かに肝機能障害を認めたと報じた。
他方徳大の田中氏5)は慢性副鼻腔炎とVB1との関係を追求する目的で患者30例に就いて手術前後の血中VB1を定量し,次の如く報じている。即ち手術前後共に遊離VB1はアレルギー型に最も多く,次で混合型,化膿型であるに反し,結合型VB1はアレルギー型に最も少い。この事は混合型の一部,アレルギー型の場合には遊離VB1が体内で燐酸エステル化され,コカルボキシラーゼとなる過程が障碍される事を物語るものであり,又この両型が手術に依る治療成績が余り良好でないのは,術後のVB1の減少高度なる為と,体成のVB1の利用が低下する為と考えられると述べている。又各市大の島田氏6)も同じく血中総VB1の消長に就き検討し,慢性副鼻腔炎患者は正常人に比し少く,又VB1負荷後の血中VB1は正常人の増加量より低下していると述べ,更に上顎洞粘膜内VB1量は肉眼的所見により浮腫高度例のものが軽度例より少い傾向にあると報じている。此等の報告は何れも吾々にとつて興味ある成績で,今後の研究に大いに役立つものと考える次第である。
Watanabe makes further persuit in the study of applying load-test for turning positive reactors towards pyro-gluconic acid to become nagtive. With the use of vitamin B1, 31.3%, of vitamin K, 50%, of atropine sulphate, 12.5 %, became negative and which are in a close agreement with those obtained in the study previously made. On the relation of positive reactors to a possible derangement of liver function, only 8.4% of cases showed such functional disturbances. in the liver.
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