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私の考案した上顎洞手術用鉤に就いて
坂本 健次郞
pp.545-546
発行日 1956年8月20日
Published Date 1956/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201614
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最近の化学療法剤並に抗生物質の発達に伴い,我々耳鼻咽喉科医が手術を行ふ機会が昔に比べて大変勘くなつてきた。以前は何処でも常時の手術に備えて多数の助手看護婦を雇用して置かなければならなかつたが,近頃は人件費が昔と比べ非常に高くなつた関係もあつて,人手は努めて切詰めざるを得ない状態にある。従つて手術に際しても極力人手を省く工夫が必要になつて来た。
上顎洞経由の副鼻腔炎手術に際し,現在多くの場合手持ち鉤を所謂「鉤持ち」に持たせて行つて居られる方が多いと思ふ。この鉤持ちの仕事は単純ではあるが案外骨の折れる仕事で一人前の鉤持ちに仕上げる迄には相当の期間の修練を要し,順れてくると退屈でいねむりが出るといふ仕未で,看護婦も余り嬉ばない仕事である。従来も之を器械に代行させる為に色々の考察がなされているがあるものは余りに簡単すぎて充分その目的を達し得ないし,又あるものは余り復雑すぎて消毒や取扱いに不便なものが多かつた。そこで私は取扱いも比較的簡単で消毒も容易に出来,且つ鉤持ちに持たすのこ余り効果の違わない自得鉤を考案して数年来使用し,その間数度の改良を加えて最近漸く所期の目的を果し得る域に達したので,茲に報告して御批判をそう次第である。
Sakamoto devises a new self-retaining retra-ctor for use in sinus operation that could be adjusted with ease during the operation with one hand.
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