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隆鼻術は古くは專ぱらパラフィン注入法が行われた。これは術後の変形殊にパラフイン腫の形成のために現在は余り行われない。しかし軽度の鞍鼻に相当の期間をおいて極めて少量を数回に用うるのは,その術式が簡単にして経済的なるため捨て難い良法である。象牙の挿入は戦前は大いに用いられた方法であるが造形が面倒なために後述の石膏印象法による合成樹脂法に圧せられ現在は一部古典派の專売の形になつた感がある。生骨及び生軟骨は医学的に最も理想的な挿入物質であるが身体の他部に傷が残ること,煮沸消毒が不可能なこと,細かい造形が施し得ないことのため特殊な場合を除いては余り用いられない。合成樹脂を挿入する方法は戦後の樹脂化学の発達及び美容整形の普及のため急速に広められた方法で,プロテーゼは石膏印象法により製作せられるために最も正確に希望する形が得られる。しかし合成樹脂が硬質であるために鼻根部のみに挿入する場合は良いが,鼻先部まで挿入する場合は鼻先を圧するとか,鼻を擤むなど鼻先部が移動する時に鼻根部のプロテーゼまで移動して極めて自然感を損うことになり又そのために障害を起すおそれがある。塩化ビニール系合成樹脂はこの点弾力性があつて良いが,粉末乃至顆粒を結合せしめるためには120°乃至180°の高温を要し吾々開業医の如き小設備にては行い難い。又ビニール系合成樹脂は柔軟にするため沸点の高い油が使用されていて,この油が永年中には組織中に浸出して障害を起すおそれがあると説くものもある。次に硅素ゴムであるがこれは板状又は棒状の既製品を鋏により適当に加工するのであつて,弾力があつて良いが合成樹脂の如く正確な細工は出来難い欠点がある。
余は以上の材料の夫々の利点を有するもの即ち製作が容易で,正確に適合し,鼻根部は骨の如く硬く,鼻先部は軟骨の如く軟かくなし得るもの望んでいたがその目的を達せず。数年来アクリール系合成樹脂を用いてプロテーゼを作り,それを鼻先部の皮膚の厚い部分に相当する個所で二個に切断し,挿入後切断部に仮性関節の如きものが出来て鼻先部が自由に動き得る様に企てていた。
Shiba modifies the nature of the insert used for heightening of the nose principally a plastic surgery for cosmetic effects.
This insert is made of plastic material of acryl derivative but so formed to be resilient at one end while, the other to be solid and firm. The use of this material allows molding of the insert to a desired shape by first obtaining a proper, plaster, of paris, cast. While it is difficult to use a file on the resilient portionfor finer shaping the material can be easily shaved off with a knife or snipped with a scissor. The insert having a tip which is resilient and movable allows its base which is firm and solid to remain in the situation where solidity is desired and the over all effect is more natural to touch and appearance than any other material thus, used.
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