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ネマトール膠球による聽器障碍の1例
小幡 達郞
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1水沢病院耳鼻咽喉科
pp.71-72
発行日 1955年2月20日
Published Date 1955/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201272
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緒言
ネマトール膠球は周知の如く,ヘノボチ油(以下ヘ油と略す)の製剤で,四塩化エチレンと共に十二指腸虫の駆除に用いられて居る。
文献によれば,ヘ油は,大正二年始めて日本に輸入されたもので,米国東部に原産するChenopodium anthelminticumの果実より蒸溜せられ,其の有効成分はLiquid organic peronyel C10H16O6である。ヘ油の副作用としては,西川氏によれば,鼓索神経を侵して,重聴,耳鳴,眩暈を起し,中枢神経及び心臓の興奮と其後の麻痺を来すと云い,又福渡氏によれば,稀には歩行蹣跚,幻覚,失話症,黄疸及び視力障碍を起すこともあり,死の転帰は,呼吸中枢麻痺によると云われている。著者は偶々駆虫の為に使用せるネマトール膠球の副作用として見られた聴器障碍の一症例を経験したので,此処に報告したい。
OBATA report a case of loss of hearing consequence to administration of Nematol an antihelimintics composed chiefly of the oil of chenopodium. The loss consisted in the involvement of percetive hearing but no involvements are found of the tunctions of vestibular apparatus.
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