特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
戦後に於ける耳と結核との間の諸問題
佐藤 重一
1
1東京慈恵医大
pp.638-644
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201236
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緒言
中耳結核に関する研究は,1912年頃ドイツのBriegerが之に関する研究を行い,之の宿題報告を行つてから,1段と世の注目を惹くに至つた。其後1920年頃ドイツのCemachが中耳結核なる広汎なる単行本を出すに至つて,其全貌が全く明かになつた感がする。然るに吾国に於ては,結核の多い国なるに拘らず,中耳結核に関する研究は遅れていて,僅かに小室,要教授の臨床的及実験的研究を見るのみであつて,10数年前迄は 偶々臨床に於て其1例にでも遭遇するや,珍奇なものとして報告される状態であつた。昭和12年余は中耳結核なる宿題報告を行い 従来聚集した中耳結核の経験例及平野恒氏により集められたる100例に及ぶ解剖例等を骨子として,中耳結核に就て述べ更に昭和15年高橋良氏との共著に於て,聽器結核なる単行本を上梓して之を世に問うた。
内耳に就ては,曩にLuttinにより努力せられた研究があるが,余等も中耳結核の研究の際に,必然的に内耳に関する研究にも手を染めたので,之等も同時に発表した。其後聽器の結核に就ては一般の認識も深められ,其診断,処置も従前に比し漸次適正に行われるに至つた。
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