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デンマークに於ける結核死亡率と結核対策
室橋 豐穗
1
1国立予防衞生研究所結核部
pp.3-12
発行日 1953年1月15日
Published Date 1953/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201150
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ヨーロッパの北隅に宛ら人間の虫樣突起のような甚だ目立たない存在でしかない1小国デンマークに於て,昨1951年度の結核死亡率が遂に人口10,000対1.0という世界最低の値を示したことは,今年5月,同国が牛結核の完全撲滅に凱歌を奏したことと共に,まことに瞠目に値する輝かしい成果であると云えよう。此のような美事な成果を挙げ得た理由の1つとして,小国であるが故の国家としての団結或は共同作業の容易さという点が大きく取りあげられ勝ちであり,又事実それが重要な因子の1つであつたに相違ないが,同じ程度のヨーロッパ諸小国に於てさえも未だ達成しえない低い値に早くも到達しえたという事実は,之以上にもつと大きな理由が在ることを示すものであろう。此の国に於ける結核克服の成果が,決して一朝一夕にして容易に達せられたものでないことは勿論であり,19世紀末から一貫したプリンシプルの下に,結核克服に向つて国民全体の飽むことを知らない努力が続けられ,そして現在も尚,結核絶滅へ向つて,非常な努力が払われているという事実を知るならば,当然得べくして得た成果であると考えることが出来よう。その経緯を述べるに当り,先ず疫学的な而から眺めようと思う。記述の或部分は曩に報告した所(日本医事新報)と重複を免れないが,之についてはお許しを願いたい。
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